多重債務公開中
今日における日本銀行は、国家目的のために奉仕する機関ではなく、安定した通貨価値と健全な信用制度を願う人々の声に対して開かれた存在でなければなりません。
今は亡きM・T元日本銀行総裁は、「総裁室のドアは、いつも開かれている」と語り、「開かれた日銀」というスローガンを掲げましたが、日本銀行は今まさにそうした基本姿勢を求められているのです。
日本銀行の最高意思決定機関である「政策委員会」は七名の委員によって構成きれています。
日本銀行総裁は当然ながら「政策委員会」のメンバーです。
都市銀行、地方銀行、商工業、農業のそれぞれの関係者から一名ずつ選ばれる委員は、国会の同意を得て内閣が任命するため、「任命委員」と呼ばれています(任期は四年です)。
これらの「任命委員」は各界の利益代表というわけではありません。
各界の有識者としての広い視野からバランスのとれた金融政策への意思決定が行われるように期待されているのです。
「政策委員」七名のうち残りの二名は、大蔵省、経済企画庁をそれぞれ代表する委員で、「代表委員」と呼ばれています。
「政策委員会」では慣例により日本銀行総裁を議長として、日本銀行の金融政策や業務運営にかかわる重要事項の決定が行われます。
例えば、後ほど説明する公定歩合の変更、準備預金準備率の変更、市中金利の最高限度の変更などが、「政策委員会」における主な決定事項です。
「政策委員会」における議事の可否は、日本銀行総裁と「任命委員」の五名の過半数によって決められます。
ここで政府の「代表委員」には議決権はありませんが、政府の経済政策(例えば財政政策)との関係で金融政策に不当な圧力のかかることのないように配慮されたためです。
日本銀行の業務を執行しているのが、総裁、副総裁、現在七名の理事によって構成される「役員集会」です。
「役員集会」は日本銀行本店八階の一室にある大きな円卓を囲んで行われるところから、日本銀行の内部ではしばしば「円卓」と呼ばれています。
「円卓」は、日本銀行の金融政策に関する重要事項のすべてが討議される最も重要な執行機関であり、そうした「円卓」を統括するのは、「政策委員会」の議長でもある総裁です。
なお、「役員集会」は、現状においては事実上、日本銀行の政策決定機関としての役割を果たしていることを付言しておきます。
日本銀行の総裁は内閣によって任命され、任期は五年です。
副総裁も同様です。
また理事は、総裁が推薦するものの中から大蔵大臣が任命し、任期は四年となっています。
日本銀行の役員としては、このほかに監事および参与がいます。
監事は日本銀行の監査役ともいうべきもので、大蔵大臣が任命します(任期は三年です)。
また参与は総裁の相談役にあたるもので、金融機関、事業会社、学界などから有識者を選んで大蔵大臣が任命します(任期は二年です)。
金融経済環境が大きく変化する中で、実際に行う各種業務のみならず、組織全体の見直しを適宜行っており、一九九○年五月に大幅な組織の変更がありました。
その結果、現在では日本銀行の本店には、これまで説明した「政策委員会」および「役員集会」の下で日常の業務運営にあたる一三の局、二つの室、一つの研究所があります。
本店のほかには、大阪支店、名古屋支店をはじめとして全国に三三の支店および三の事務所があります。
また海外では、ニューョーク、ロンドン、香港に海外駐在参事を置いているほか、パリ、フランクフルト、ワシントンに駐在員を置いています。
以上のような日本銀行の現行組織をまとめれば、図1のようになります。
なお、各業務を担当する日本銀行の職員数は、現在約六○○○名です。
皆さんが日常の生活において使用している「お金」には、「お札」と、「硬貨(コイン)」があります(これらを以下では現金通貨と呼びます)。
「お札」の正式名称は日本銀行券であり、日本銀行によって独占的に発行されています。
日本銀行法が「銀行券ハ公私一切ノ取引二無制限二通用ス」(第二九条)と定めているように、日本銀行券には強制通用力が与えられており、法律によって定められた通貨、すなわち法貨(リーガル・テンダー)とも呼ばれます。
一方、「硬貨」は政府によって発行きれる通貨であり、日本銀行が政府から一括して受け入れ、日本銀行の窓口から市中に出ていきます(「硬貨」も日本銀行券と同様に法貨です)・白銅貨、銅貨、ニッケル貨などの硬貨はごく最近まで補助貨幣と呼ばれていました。
それらはもともと金貨、銀貨などの本位貨幣を補助する役割を果たしたところから、そのように命名されていたのですが、金貨や銀貨が本位貨幣としての地位を退いた現状を考慮して一九八八年(昭和六十三年)以降、単に貨幣と呼ばれています。
なお、一九九五年(平成七年)末における日本銀行券の発行残高は約四六兆円、貨幣は約四兆円であり、わが国の現金通貨の約九二%が日本銀行券によって占められていることがわかります。
銀行券と硬貨を合わせた現金通貨は、それを使用した時点で決済が最終的に完了するという意味で「支払完了性」を持った決済手段です。
ところで、将来において銀行券や硬貨を代替するものとして、ICカードやインターネットを利用した電子マネーが実験段階から次第に実用化の可能性を探りつつあることには、大いに注目しておく必要があるでしょう。
日本銀行の中で銀行券の発行業務(および政府が発行する貨幣の取り扱い業務)を担当しているのが発券局です。
発券局では、まず企業の取引決済・給与支払いや家庭の消費活動などのために必要な銀行券はどのくらいかを予測し、日本の経済活動が円滑に行われるために必要な銀行券を供給できるように銀行券の製造計画を立てます。
新しくできた銀行券は、日本銀行本店の発券局窓口や全国各地にある支店の発券課窓口から市中金融機関を経由して、企業や家庭に流れていきます。
次に企業や家庭の取引決済・消費活動などの手段としていったん用いられた銀行券は、市中金融機関を経由して再び日本銀行本支店の窓口へと戻ってきます。
発券局では、こうして戻ってきた銀行券について枚数の確認、真偽の鑑定を行います。
また銀行券の汚れや傷を調べ、再使用には不適当と判断きれたものは廃棄処分にしています。
残りは新しい日本銀行券とともに再び日本銀行の窓口から市中へと出ていきます。
このように発券局は銀行券の発行から廃棄まで、いわば「お札の一生」を世話する仕事に携わっているのです。
また、こうした発券業務の立場から見ると、全国の主要都市に位置する日本銀行の本支店は、日本経済にとっての血液ともいうべき銀行券を全国各地にくまなく行き渡らせるための「銀行券の流通センター」としての機能を果たしているといえます。
なお、皆さんが万一不幸にして火災などによって日本銀行券を損傷されたときには、日本銀行本店の発券局か支店の発券課の窓口で新しい銀行券と交換してもらうことができます。
例えば、日本銀行の本店一階の広々とした営業場を左奥に進むと、そこに発券局の「傷んだお金の引換窓口」を見いだすことができるはずです。
これまで日本銀行券の発行業務について具体的に説明しましたが、それでは日本銀行券の発行額はどのようにして決められているのでしょうか。
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